パワーハラスメント
セクシュアルハラスメント
マタニティハラスメント

ハラスメントとは

ハラスメント(Harassment)とは、『嫌がらせ、いじめ』のことを意味します。パワハラ、セクハラ、マタハラなど様々な種類のハラスメントがありますが、他者に対する発信・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えることを指します。

パワーハラスメント

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場内での優位性や地位を利用して、他者に嫌がらせをしたり、苦痛を与えたりすることです。身体的あるいは言葉による暴力、適正の業務範囲を超えた仕事の強制や妨害、また反対に仕事を与えないという行為もあてはまります。
パワハラというと、上司がその立場を利用し、部下に身体的・精神的な苦痛を与えると認識されることが一般的のようですが、最近では部下から上司の「逆パワハラ」も増えつつあると言われてます。パワハラは上限関係だけにとどまらず、部下から上司、同僚間のいじめや嫌がらせもパワハラに含まれます。

パワーハラスメントの定義

パワーハラスメントの定義とは『職務上の地位や優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為』を指し、パワハラの判断基準となるのは以下の3つです。

  1. 職場の地位・優位性を利用している
  2. 業務の適正な範囲を超えた指示・命令である
  3. 相手に著しい精神的苦痛を与えたり、その職場環境を害する行為である

パワハラ6つの類型(種類)

厚生労働省は、パワハラに相当する6つの行為類型を提示しています。
何が業務の適正な範囲を超えているかについては、業種や企業文化の影響を受けるため、各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にすることが大事です。
*下記はパワハラにあたりうる全てを網羅したものではなく、これら以外は問題ないということではありません。

身体的な攻撃

  • 物を投げつけられ、体に当たった
  • 蹴られたり、殴られたりした
  • 胸ぐらをつかまれて説教された
  • 髪を引っ張られた
  • 机や椅子を蹴飛ばされて脅された
  • 壁に押さえつけられた

精神的な攻撃

  • 同僚の前で上司から無能扱いする言葉を受けた
  • みんなの前で些細なミスを大きな声で叱責された
  • 必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱られた
  • ことあるごとに嫌味を言われる
  • 他の社員を宛先に含めて、メールで罵倒された
  • 「命令に従わなければ、悪い評価をつける」と脅迫された

人間関係からの切り離し

  • 理由もなく他の社員との接触や協力依頼を禁じられた
  • 先輩・上司に挨拶しても無視され、挨拶をしてくれない
  • 根拠のない悪い噂を流され、会話をしてくれない
  • 飲み会や社員旅行などの社内イベントに参加させない
  • 業務を行う部屋とは別の部屋で作業を行うように強要する
  • 強制的に自宅待機を命じられる

過大な要求

  • 終業間近なのに過大な仕事を毎回押し付けられる
  • 1人ではできない量の仕事を押し付けられる
  • 達成不能な営業ノルマを常に与えられる
  • 上司の自宅から会社までの送迎を無理強いされる
  • 業務とは関係のない話を電話で長時間聞かされる
  • 他の社員の仕事を押し付け、長時間労働を強いられる

過小な要求

  • 営業職なのに倉庫の掃除を必要以上に強要される
  • 事務職で採用されたのに仕事は草むしりだけ
  • 他の部署に異動させられ、仕事を何も与えられない
  • 管理職なのに新入社員に課すような業務を与えられた
  • 業務とは関係のないコピー取りなどの雑用を命令される
  • 全く仕事を与えてもらえない

個の侵害

  • 個人所有のスマホを勝手に覗かれる
  • 不在時に机の中を物色される
  • 休みの理由を根掘り葉掘りしつこく聞かれる
  • 交際相手について執拗に聞かれる
  • プライベートの休暇予定について執拗に聞かれる
  • 夫(妻)に対する悪口を言われる

セクシュアルハラスメント

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、「性的な言動」によって、個別または職場全体に不利益・不快感を与えることで、主に職場で行われる言動のことを指します。

「性的な言動」とは、性的な内容の発言および性的な行動を指します。

性的な内容の発言 ・性的な事実関係を尋ねること
・性的な内容の情報を意図的に流布することなど
性的な行動 ・性的な関係を強要すること
・必要なく体に触ること
・わいせつな図画を配布することなど

職場におけるセクシュアルハラスメントには、「対価型」と「環境型」があります。

対価型セクハラ

職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それに拒否・抵抗などをしたことで、労働者が解雇、降格、減給などの不利益を受けること。

具体例

  • 性交渉を受け入れたら、昇進させてやると言われた
  • 出張中の車内で腰を触られ、断ったら後日異動となった
  • 飲み会で太ももを触られ、断ったら降格させられた
  • 社内で繰り返すセクハラ発言を咎めたら退職させられた

環境型セクハラ

職場において行われる労働者の意に反する性的な行動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じること。

具体例

  • 抱きつく、胸を触るなどの体への接触
  • 女性にお酌を強要する、男性に裸踊りを強要する
  • 身体的特徴や容姿について、本人が望まないことを言う
  • 結婚や出産、交際相手の有無を尋ねる
  • 露出度の高いパソコンのデスクトップ壁紙を用いる
  • 事業主・上司・同僚に限らず、取引先・顧客等もセクハラの行為者になり得ます。
  • セクハラの行為者には、男性も女性も加害者にも被害者にもなり得る他、異性に対するものだけではなく、同性に対するものも該当します。
  • 職場におけるセクハラは、相手の性的指向または性自認に関わらず、該当することがあり得ます。

マタニティハラスメント

マタハラ(マタニティハラスメント)とは、職場において上司・同僚からの妊娠・出産したこと・育児休業等の利用に関する言動により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることです。
妊娠等の状態や育児休業制度等の利用と嫌がらせ等となる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。
なお、業務分担や安全性等の観点から、客観的にみて業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントに該当しません。

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントには、「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。

制度等の利用への嫌がらせ型

次に掲げる制度または措置の利用に関する言動により、就業環境が害されるものを言います。

男女雇用機会均等法が対象とする制度または措置
①産前休業
②妊娠中および出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)
③簡易的な業務への転換
④変形労働時間制での法定労働時間を超える労働時間の制限、時間外労働および休日労働の制限ならびに深夜業の制限
⑤育児時間
⑥坑内業務の就業制限および危険有害業務の就業制限

育児・介護休業法が対象とする制度または措置
①育児休業
②介護休業
③子の看護休業
④介護休暇
⑤所定外労働の制限
⑥時間外労働の制限
⑦深夜業の制限
⑧育児のための所定労働時間の短縮
⑨始業時刻変更等の措置
⑩介護のための所定労働時間の短縮等の措置
※⑧〜⑩は就業規則等の定めによります。

具体例

  • 産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた。
  • 時間外労働の免除について上司に相談したところ、「次の査定の際は昇進しないと思え」と言われた。
  • 育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得を諦めざるを得ない状況になっている。
  • 介護休業について請求する旨を周囲に伝えたところ、同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうすべき。」と言われた。「でも自分は請求したい」と伝えたが、再度同様の発言をされ、取得を諦めざるを得ない状況に追い込まれた。
  • 上司・同僚が「所定労働の制限をしている人にはたいした仕事はさせられない」と繰り返し(または継続的に)言い、専ら雑務のみさせられる状況となっており、就業する上で看過できない程度の支障が生じている。
  • 上司・同僚が「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」と繰り返し(または継続的に)言い、就業する上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
  • ハラスメントの対象となる労働者は、妊娠・出産に関する制度を利用する(利用しようとする)女性労働者および育児・介護に関する制度等を利用する(利用しようとする)男女労働者です。
  • ハラスメント行為者となり得るのは、上司・同僚です。
  • 上司がこのような言動を行った場合は、1回でも該当しますが、同僚がこのような言動を行った場合については、繰り返しまたは継続的なものが該当します。(意に反することを伝えているにも関わらず、さらにこのような言動が行われる場合を含み、繰り返しまたは継続的であることは要しません)
  • 労働者が制度の利用を請求したところ、上司が個人的に請求を取り下げるよう言う場合については、ハラスメントに該当します。
    事業主として請求等を取り下げる(制度等の利用を認めない)場合については、制度等の利用ができる旨を規定している各法(例:産前休業の取得であれば労働基準法第65条第1項)に違反することになります。
  • 言葉によるものだけでなく、必要な仕事上の情報を与えない、これまで参加していた会議に参加させないといった行為もハラスメントになります。

状態への嫌がらせ型

女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により、就業環境が害されるものを言います。

対象となる事由
①妊娠したこと
②出産したこと
③産後の就業制限の規定により就業できず。または産後休業をしたこと
④妊娠または出産に起因する症状により、労務の提供ができないこと(できなかったこと)または労働能率が低下したこと
 ※「妊娠または出産に起因する症状」とは、つわり・妊娠悪阻・切迫流産・出産後の回復不全等、妊娠または出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状を言います。
⑤坑内業務の就業制限もしくは危険有害業務の就業制限の規定により、業務に就くことができないこと、またはこれらの業務に従事しなかったこと

具体例

  • 上司に妊娠を報告したところ、「他の人を雇うので、早めに辞めてもらうしかない」と言われた。
  • 上司・同僚が「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し(または継続的に)言い、仕事をさせない状況となっており、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
  • 上司・同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し(または継続的に)言い、就業をする上で看過できない程度の支障が生じる状況となっている。
ハラスメントには該当しない具体例
  • 業務体制を見直すため、上司が育児休業をいつからいつまで取得するのか確認すること
  • 業務状況を考えて、上司が「次の妊婦健診はこの日は避けて欲しいが調整できるか」と確認すること
  • 同僚が自分の休暇との調整をする目的で休業の期間を訪ね、変更を相談すること
  • 上司が長時間労働をしている妊婦に対して、「妊婦には長時間労働は負担が大きいだろうから、業務分担の見直しを行い、あなたの残業料を減らそうと思うがどうか」と配慮する
  • 上司・同僚が「妊婦には負担が大きいだろうから、もう少し楽な業務にかわってはどうか」と配慮する
  • 上司・同僚が「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」と配慮する
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